このページは、弁護士小倉秀夫による、法律問題に関するQ&Aを掲載したものです。具体的なご相談やご依頼については、こちらのフォームをご利用ください。
弊社では、スマホやタブレット用のアクセサリー類を開発し、製造、販売しています。スマホやタブレットは、メーカーごとに形や大きさが異なりますし、同じメーカーの商品でも、型式、型番が異なれば、形や大きさが異なります。なので、スマホやタブレット用のアクセサリーを小売店においていただくにあたっては、どのメーカーのどの型式、型番の商品なのかをパッケージに明記しておくことが望ましいのです。とはいえ、例えば、「iPad mini 7専用」とかパッケージに記載した場合、Apple Inc.の権利を侵害したことにはならないでしょうか。
スマートホンやタブレットを開発し販売しているメーカーは、自社の商品のブランド名に付き、きちんと商標登録しているのが通例です。例えば、Apple Inc.も「IPAD MINI」という標章について、商標登録をしています(国際登録番号1152788、1464012)。
では、アクセサリー類等のメーカーが、自社商品のパッケージに、「iPad min専用」等の表示を掲載することは、それらの商標権侵害に当たるのでしょうか。
商法表第2条第3項第1号によれば、「商品又は商品の包装に標章を付する行為」は標章の使用にあたるとされていますので、自社商品のパッケージに「iPad mini」というApple社の登録商標と類似した標章を付した場合、これを使用することになるようにも見えます。
しかし、最高裁判所は、商標権侵害を構成するためには、それが、自社の商品・サービスと他社の商品・サービスとを区別し、、または商品・サービスのの出所を表示するために用いられる必要があります。このような目的で商標を使用することを「商標的使用」と言います。
では、iPad mini 7にマッチするように製造されたアクセサリーについて、「iPad mini 7専用」とパッケージに記載するのは、商標的使用にあたるのでしょうか。この場合、「iPad mini 7専用」との記載は、他社の商品との区別をするために用いられたものでもなく、また、その商品の出所がどこにあるのかを示すためになされたものでもありません。その商品の機能・性能を示すためになされたものだということとができます。したがって、これは「商標的使用」にはあたらないということができます。
したがって、この場合、Apple Inc.からライセンスを受けることなく「iPad mini 7専用」とパッケージに記載しても、商標権侵害にはなりません。
では、不正競争防止法上の不正競争行為とされる危険はないのでしょうか。同法第2条第2号は、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為」を不正競争行為としています。そして、「iPad mini」は、さすがにApple Inc.の「著名な商品等表示」にあたります。
ただ、第2号の不正競争行為に当たるためには、他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを「自己の商品等表示として」として使用する必要があります。そして、商品等表示とは、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」を言います(同法第2条第1項第1号)。しかし、「iPad mini 7専用」との記載における「iPad mini」という標章は、その商品を表示するものとして使用されているのではなく、「専用」という言葉と組み合わせることで、その商品の機能・性能を示すものとして使用されています。そうである以上、「iPad mini 7専用」との記載については、「iPad mini」というApple Inc.の著名商品等表示と同一又は類似のものを「自己の商品等表示として」使用してはいないので、第2号の不正競争行為にはあたらないということになります。
ブランド力の高いスマートフォンやタブレットを開発し製造 販売しているメーカーとしては、アクセサリー類の開発・製造・販売も、自社とライセンス契約を結んでいるメーカーに独占させたくて、商標権等を盾に、その製造・販売の中止を求めてくることがあるかもしれません。そのときは、知的財産権法に詳しい弁護士に相談し、対処してもらうとよいと思います。